作成:2023.5.3 更新:2024.5.25
マンションとは、法律的には「区分所有建物」と呼ばれており、構造上区分され、独立して住居等の用途に供することができる数個の部分から構成される建物のことを言います。
登記事項証明書(登記簿謄本)においては戸建て不動産と違い様々な情報が記載されているので、遺言書の書き方について注意が必要です。
今回は、マンションを妻に相続させる場合を例に書き方についてご紹介します。
目次
1.敷地権の登記の有無で書き方が変わってきます
マンションのように、ひとつの建物の中に、独立し区分された部屋(専有部分)が複数ある建物を区分建物、各専有部分の所有権を区分所有権、所有者を区分所有者といいます。
マンションの住戸(専有部分)は、全体建物の一部分です。また、マンションの敷地(土地)は区分所有者の共有で、敷地の特定部分を単独で所有しているわけではありません。
複数の人間がひとつの所有権を持っている場合を共有といい、共有者は持分に応じて、共有物全体の使用ができるものとされています。これを共有持分といいます。
マンションの権利がどのように構成されているかというと、単独での建物専有部分の所有権と敷地所有権の共有持分から成り、両者は一体化され、分離して処分することはできません。
つまり、マンションの部屋の部分(建物)だけ残して、土地部分だけを売却するということはできず、土地と部屋(建物)がセットになっています。このように専有部分と分離して処分できない敷地に関する権利を、敷地権といい、土地と建物が一体となって登記されている権利形態のことをいいます。
現在は上記のように敷地権が登記されているマンションがほとんどですが、区分所有法の改正のあった1983年以前に建てられ敷地権化されていないマンションも稀ですが存在するようです。
敷地権の登記の有無によって遺言書の書き方も異なってきますので注意が必要です。
2.敷地権の登記が「ある」場合
記載のポイント
不動産の表記を正確に書くために、必ず法務局でマンションの登記事項証明書(登記簿謄本)を取り、書かれている通りに記載しましょう。
記載内容は
- 一棟の建物
- 専有部分の建物
- 敷地権の目的である土地
- 敷地権の表示
になります。
敷地権の登記の有無に関係ない共通事項として、区分建物の一棟の建物は、登記事項に名称の記載がある場合は、これを記載すればよく、構造や床面積などの詳細な情報を記載する必要はありません。
遺言書の文例
遺言書
遺言者甲野太郎は、遺言者が所有する下記の不動産を、遺言者の妻○○(昭和○○年○○月○○日生)に相続させる。
記
(一棟の建物の表示)
所 在 ○○市○○町○○丁目○○番地○○
建物の名称 ○○
(専有部分の建物の表示)
家屋番号 ○○番○○
建物の名称 ○○号
種 類 居宅
構 造 鉄筋コンクリート造1階建
床面積 ○階部分 ○○.○○平方メートル
(敷地権の目的である土地の表示)
土地の符号 1
所在及び地番 ○○市○○町○○丁目○○番○○
地 目 宅地
地 積 ○○.○○平方メートル
(敷地権の表示)
符 号 1
敷地権の種類 所有権
敷地権の割合 ○○○○○分の○○○
令和○年○月○日
○○県○○市○○町○○丁目○番○号
遺言者 甲野太郎 印
3.敷地権の登記が「ない」場合
記載のポイント
戸建て不動産と同じように土地と建物に分けて記載します。
必ず法務局でマンションの登記事項証明書(登記簿謄本)を取り、書かれている通りに記載しましょう。
建物についての記載内容は
- 一棟の建物
- 専有部分の建物
になります。
遺言書の文例
遺言書
遺言者甲野太郎は、遺言者が所有する下記の不動産を、遺言者の妻○○(昭和○○年○○月○○日生)に相続させる。
記
①土地
所 在 ○○市○○町○○丁目○○番○○
地 番 ○○番○○
地 目 宅地
地 積 ○○.○○平方メートル
(共有持分○○○○○分の○○○)
②区分建物
(一棟の建物の表示)
所 在 ○○市○○町○○丁目○○番地○○
建物の名称 ○○
(専有部分の建物の表示)
家屋番号 ○○番○○
建物の名称 ○○号
種 類 居宅
構 造 鉄筋コンクリート造1階建
床面積 ○階部分 ○○.○○平方メートル
令和○年○月○日
○○県○○市○○町○○丁目○番○号
遺言者 甲野太郎 印
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