夫婦共同で遺言書をつくりたいけど、そもそも作れるの?
そんな疑問にお答えしたいと思います。
目次
1. はじめに
年も重ねてきて念のためにそろそろ遺言書を書いてみようか、せっかくなら夫婦で!
そうお考えの方も多いのではないでしょうか。
夫婦共同で遺言書をつくりたいけど、そもそも作れるの?
そんな疑問にお答えしたいと思います。
2. 共同遺言の禁止
結論を申し上げてしまうと・・・
たとえご夫婦であったとしても、同じ証書で遺言をすることはできない事になっています。
このような遺言のことを共同遺言といい、せっかく思いを込めてつくっても残念ながら無効になってしまいます。
共同遺言が認められる国もあるようですが日本では民法によってこれを禁止しており全部無効となってしまいます。
共同遺言の禁止は夫婦に限った話ではなく、2人以上の者の共同遺言を禁止するものです。
<民法第975条>
遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。
3. なぜ共同遺言は禁止されているのか
せっかく夫婦共同で遺言書を書いても、残念ながら無効となってしまいます。
なぜ禁止されているのでしょうか? 理由は次のように考えられています。
(1)遺言は自由な意思によりなされるべきですが、共同遺言は、もう一方の遺言者の意思により制約されてしまい
自由な意思とは言い難い面があります。
(2)遺言は自由に撤回できることとされていますが、共同遺言では各自が自由に撤回することができない可能性があります。
(3)共同遺言でなされた2つ以上の遺言内容が相互に関連している場合、一方が失効したときに他方が無効になるのか、それとも引き続き有効であるのかという問題が生じます。
以上の点から共同遺言は禁止されています。
4. 共同遺言にあたるかどうかの判例
✅ 共同遺言にあたる(=無効)とされた判例
同一の遺言書に二人の遺言が記載されていて、一方は氏名の自書があるが、もう一方には氏名の自書がない場合。
自書がない場合は方式違反により無効であるが自書があるもう一方には方式違反がないとしても、それは共同遺言にあたり無効である、と判断されました。(最判昭56.9.11)
✅ 共同遺言にあたらない(=有効)とされた判例
Aさんの遺言書2枚、Bさんの遺言書1枚、計3枚が1セットで綴(つづ)られていた場合。
この1セットが「同一の証書」とみれば民法975条により無効となりそうですが、裁判所は、それが同一の証書であっても容易に切り離す事ができる場合には共同遺言にはあたらず、有効である、と判断しました。(最判平5.10.19)
✅ 判例ではありませんが…
同一の証書ではないが、ご夫婦が別々に遺言書を作成し、同一の封筒に入れていた場合。
「同一の証書」ではないので共同遺言にはあたらないと考えられます。
5. ご夫婦で遺言書をつくりたい場合はどうするか
結論としては、「ご夫婦それぞれ別につくる。」これがベストです。
今回のようにご夫婦での作成をお考えの方は、お子さまがいらっしゃらないご夫婦であるケースが多いと思います。
先日当事務所にご依頼いただいた方(ご夫婦)はまさにこのケースでした。
夫婦別個に遺言書をつくることに違和感がある方もいらっしゃるかもしれませんが
きちんとした形式で残しておくことが結果的にお互いにとって一番です。
ご夫婦で遺言書をつくることを検討している方はぜひお問い合わせください。
遺言・相続のお手続きなら当事務所へご相談ください
当事務所は、京都市を中心に関西全域で、生前の相続対策の支援をしている行政書士事務所です。
遺言書の作成や財産管理委任契約、任意後見契約、死後事務委任契約、尊厳死宣言書など、ご本人様やご家族様が安心できる暮らしを法務面からご提案させていただきます。
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