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使い勝手が良くなる遺言制度と相続をめぐる紛争防止

目次

1.はじめに

 

日本にはおよそ1900もの法律があります。

人々の生活に直結するとても重要な法律といえば民法ですが

その中で相続に関する分野について平成30年に大きな見直しがありました。

 

前回のブログにも書いた通り、

日本における平均寿命は延び超高齢化社会に向かうなど

社会経済の変化が著しいですね。

そうした変化に対応することが、今回の改正のねらいと言えます。

 

当ブログではその改正内容について3回シリーズに分けてお伝えしたいと思います。

まず第一弾として「使い勝手が良くなる遺言制度と相続をめぐる紛争防止のため」の改正内容です。

 

2.自筆証書遺言の方式緩和/平成31年1月13日施行

 

以前当ブログでもご紹介させていただいたように

遺言の普通方式には

①自筆証書遺言、②公正証書遺言、③秘密証書遺言

以上の3種類があります。

今回の改正によって方式緩和されたのは①自筆証書遺言になります。

 

【改正前】

 

全文手書きしなければならない。

 

遺産の種類が多い場合、

遺言書とは別に財産目録を作り添付するケースが普通ですが、

当然この財産目録も手書きで書かなければなりません。

不動産であれば登記簿謄本通りの記載が求められます。

遺言者がご高齢であればこの作業はとても負担が重いですよね・・・。

 

【改正後】

 

自書によらない財産目録を添付することができる。

 

つまり、パソコンで目録を作成する事が認められます。

そして「自書によらない」ということは、

私たち行政書士でもお手伝いが可能という事です。

また、遺産に預貯金がある場合は通帳のコピーを添付する事ができます。

ただし、添付書類の各ページに遺言者の署名押印が必要です。

これは偽造防止のためには必要な事ですが全文自書よりはかなり負担は軽くなります。

 

3.法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設/令和2年7月10日施行

 

文字通り、法務局で遺言書を保管してくれる制度です。

 

自筆証書遺言は手書きできれば遺言者本人のみで作成できる手軽さはあるものの

・作成した遺言書がどこにいったか分からず相続人に発見されない事がある

・改ざんされるおそれがある(改ざんはもちろん違法ですよ)

これら遺言書作成後の管理の面でトラブルが発生する可能性があります。

 

こうしたデメリットを解消するために本制度が創設されました。

個人的にメリットがあると感じるのは、上記以外では家庭裁判所での検認が不要という事ですかね。

検認手続きが不要ということは、速やかに相続手続きができるという事です。

 

それでは手続きの概要を確認しておきたいと思います。


【遺言書の保管申請(遺言者が遺言書を預ける手続き)】

 

1,自筆証書による遺言書を作成する

2,保管申請をする遺言書保管所を決める

遺言者の①住所地、②本籍地、③所有不動産の所在地のいずれかを管轄する遺言書保管所

※京都府の場合は下記にまとめておきます

3,申請書を作成する

様式(法務省HP)をダウンロードするか、法務局窓口でもらう

4,保管申請の予約をする

予約サービス専用HPで予約(24時間365日可)

②法務局(遺言書保管所)への電話による予約

③法務局(遺言書保管所)窓口における予約

5,保管申請をする

下記①~⑤を持参し、予約した日時に遺言者本人が遺言書保管所に行く

①遺言書(ホッチキス止めしない、封筒不要)

②申請書(あらかじめ記入しておく)

③添付書類(3ヶ月以内に発行された本籍の記載のある住民票の写し等)

④本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、運転経歴証明書等)

⑤手数料(1通につき3,900円、収入印紙を納付用紙に貼る)

6,保管証を受け取る

保管証には保管番号が記載されています。後々、閲覧や撤回、変更等する時に

この番号があると便利なので大切に保管してください。またご家族にはこの

保管証を利用してお伝えしておくのも良いと思います。

 

その他注意点

・手続きには必ず遺言者本人が行きます。

・法務局では自筆証書遺言の方式について外形的な確認を行います。

内容についての相談は不可です。(行政書士や弁護士など専門家にご相談ください)

 


【遺言書情報証明書の請求(遺言者が亡くなった後、相続人等が行う手続き)】

 

1,交付請求をする遺言書保管所を決める

・全国どこの遺言書保管所でも請求可。

・交付請求できる人・・・相続人、受遺者、遺言執行者

2,請求書を作成する

添付書類

①遺言者の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍)謄本

②相続人全員の戸籍謄本

③相続人全員の住民上の写し

ただし、「法定相続情報一覧図の写し」(住所記載あり)がある場合、

上記①~③は不要で、一覧図の写しのみで足ります

(ちなみに、この一覧図は当事務所でも作成賜ります)

3,交付請求の予約をする

保管申請時と同じ

4,交付請求をする

手数料(1通につき1,400円、収入印紙を納付用紙に貼る)

5,証明書を受け取る

 

その他

・遺言書情報証明書は、登記各種手続きに利用できます

・家庭裁判所の検認手続きは不要です

・相続人等が証明書の交付を受けると、遺言書保管官はその方以外の相続人等に対して

遺言書を保管している旨を通知します。

 

 

以上が手続きの概要です。

上記以外にも閲覧や撤回などの手続きもできます。最寄りの法務局へお問い合わせください

 

4.遺言書保管制度利用時の手数料と京都府内の管轄区域

手数料の一覧

申請・請求の種別 申請・請求者 手数料
遺言書の保管の申請 遺言者 1通につき 3,900円
遺言書の閲覧請求(モニター) 遺言者・関係相続人等 1回につき 1,400円
遺言書の閲覧請求(原本) 遺言者・関係相続人等 1回につき 1,700円
遺言書情報証明書の交付請求 関係相続人等 1通につき 1,400円
遺言書保管事実証明書の交付請求 関係相続人等 1通につき 800円

京都府内の遺言書保管所管轄一覧

庁名 管轄区域                                   
本局 遺言者
宇治支局 宇治市、城陽市、八幡市、京田辺市、木津川市、久世郡、綴喜郡、相楽郡
園部支局 亀岡市、南丹市、船井郡
宮津支局 宮津市、与謝郡
京丹後支局 京丹後市
舞鶴支局 舞鶴市
福知山支局 福知山市、綾部市

 

以上、使い勝手が良くなる遺言制度と相続をめぐる紛争防止のための改正内容をまとめました。

主に自筆証書遺言に関する改正でしたね。

作成される方のニーズに合わせて「自筆証書遺言」「公正証書遺言」の選択をされると良いと思います。

 

次回は「残された配偶者の生活への配慮」の観点からなされた改正点についてまとめてみたいと思います。

 

 

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