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遺言書の普通方式【自筆証書・公正証書・秘密証書】を解説

初稿:2021.6.21

更新:2024.2.23

「遺言書」の書き方にはルールがあります。

一般的に多くの方が利用することになる「普通方式」では【自筆証書遺言】【公正証書遺言】【秘密証書遺言】の3種類があります。

もしあなたが遺言書の作成を検討されているならどの種類で作成するか。

それぞれの特徴を知って頂いた上でどの種類を選択するかのご参考になれば幸いです。

 

目次

1.遺言書には「普通方式」と「特別方式」があります

遺言書の書き方にはルールがあります。

民法で規定されている遺言書には

  • 普通方式
  • 特別方式

の2方式があります。

特別方式というのは、命の危険が目前に迫っているとか、伝染病隔離者や船舶中にある人が作ることができる方式です。

なので基本的にほとんどの人は普通方式により作成することになります。

 

普通方式には

  1. 自筆証書遺言
  2. 公正証書遺言
  3. 秘密証書遺言

の3種類が用意されていて、遺言書を作成する場合このいずれかの種類によって作成しなければなりません。

それでは、それぞれの種類を具体的に見ていきましょう。

 

2.【自筆証書遺言】について

自筆証書遺言では文字通り自筆によること(=自書能力といいます)が要求されています。

したがって、原則としてパソコン等による作成は認められていません。

 

氏名については

氏又は名のどちらかのみの記載でもよく、

戸籍上の氏名ではないペンネームでも有効であると解されています。

 

押印については

三文判や押印の代わりに指印でもよいとされています。

しかしながら、遺言の効力に問題を残さないために、当事務所に作成のご依頼をいただいたお客様には、戸籍上の氏名を用いて、実印を使用することをオススメしています。 

 

日付については

「令和○年○月○日」というように年、月、日を明確に記載します。

「令和○年○月吉日」という記載は認められないと解されています。

 

平成30年の改正民法では、自筆証書遺言の方式が緩和され、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合、その目録については自書しなくてもよいとされました。

 

財産目録はパソコンで作成できるということですね。

遺言者本人が作成するのはもちろんのこと、遺言者以外の人に作ってもらうことも可能になったということです。

 

また、作成した自筆証書遺言を法務局で適正に管理・保管される「自筆証書遺言保管制度」が令和2年7月からスタートしています。

 

自筆で作成しなければいけないリスクが徐々に緩和されている印象を受けますが、その場合であっても細かな要件がありますので最新の注意が必要です。

 

作成方法
  • 遺言者がその全文、日付及び氏名を自ら手書きし、押印することによって作成する
  • (改正民法では財産目録はパソコンでの作成が可能となりました)
メリット
  • 最も簡単で費用がかからない方法
  • 遺言の存在及び内容を秘密にすることができる
  • 法務局での遺言書保管制度を利用すれば紛失、偽造を防止できる
デメリット
  • 遺言書の紛失、偽造、変造されたりする危険がある
  • 方式の不備、文言の解釈に問題が生じる可能性がある
  • 家庭裁判所の検認手続きが必要

3.【公正証書遺言】について

公正証書遺言では、遺言者が公証役場に行き、遺言内容を公証人に伝え、公証人が遺言書を作成することになります。

 

公証人が作成するということで、遺言者の本人確認はもちろんのこと、法律上のルール違反で無効になることはまずありません。

 

そういう意味で一番安心できる遺言書といえるでしょう。

 

ただし、日常生活の中で公証役場に行くとか、公証人と話しをする機会はほとんどありませんので、手続きのハードルが若干高いと言わざるを得ません。

 

作成方法

  1. 証人2人以上の立ち会いがあること

  2. 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること
  3. 公証人が遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること
  4. 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名押印すること
  5. 公証人が、その証書が1から4の方式に従って作ったものえある旨を付記して、これに署名押印すること
メリット
  • 公証人のもとに原本が保管されるので内容の変更、紛失の危険がない
  • 遺言の効力が問題になる危険性が少ない
  • 家庭裁判所の検認の手続きが不要である
デメリット
  • 公証人役場に証人とともに行かなければならない(ただし、遺言者が病気等により公証人役場に行くことができない場合は、公証人に病院、自宅まで来てもらうことができます)

  • 費用がかかる

4.【秘密証書遺言】について

秘密証書遺言は、遺言者が自作した遺言書を誰にも見せることなく封書・封印し、それを公証役場に持ち込んで公証人の前で遺言者本人であること、住所を申述することで完成する遺言書です。

 

手続きに公証人が関与している点で、遺言書の存在については間違いのないものになりますが、遺言書の中身については誰も確認ができず、要件不備で無効となるハイリスクな遺言書と言えるでしょう。

 

この秘密証書遺言はほとんど利用されていないのが現状です。

 

作成方法

  1. 遺言者が遺言書に署名し押印すること

  2. 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること

  3. 遺言者が、公証人1人及び証人2人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること

  4. 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名押印すること

メリット
  • 遺言書の存在については明らかにしながら、遺言の内容を他者に秘密にして保管することができる
  • 自書能力がなくても作成できる
デメリット
  • 遺言書の内容については公証人が関与しないため疑義が生じる可能性がある

  • 遺言を執行するために家庭裁判所の検認が必要

5.どの種類の遺言書がよいか

結局どのタイプの遺言書を作成すればよいのか。

 

この種類にすべきだ!と一方的に申し上げることはできませんが、遺言者のご家族の構成であったり、財産の内容や相続人への配分などの事情により異なります。

 

遺言者本人の価値観、何に重きをおくかということも大きく影響すると思います。

 

ただ、遺言が執行される場面を考えると、公正証書遺言であれば法務局や金融機関において書類が少なくて済むなど、スムーズな相続手続きになるのは間違いありません。

 

6.まとめ

普通方式の種類についてご紹介させていただきました。

 

それぞれの遺言書の書き方や手続きには特徴があり、結局のところ遺言者自身の状況に合ったもので作成して頂くのが一番!と言ってしまえば身も蓋もない感じがしますね。

 

どの種類の遺言書を作成するのがよいか、そもそも遺言書を作成した方が良いのか・・・

そうした疑問をお持ちの方は一度お近くの行政書士にご相談されるとよいかもしれません。

 

遺言書のことなら当事務所へご相談ください

当事務所は、京都市を中心に関西全域で遺言書の作成をはじめとする生前対策の支援をしている行政書士事務所です。

どんな些細なことでも結構です。気になることやお困りごとなどがありましたらお気軽にご相談ください。

 

最後までお読みくださりありがとうございました。

行政書士はやし行政法務事務所

代表行政書士 林 宏雄