2022.10.13初稿
2023.11.11更新
相続の手続きというのは、亡くなられた方(被相続人)の持っていた財産(遺産)を一定の人に引き継がせることを言います。
そのためにはまず最初に行うことは、相続財産を確定させることです。
確定させるためには、被相続人がエンディングノートや遺言書を書いていない限り、遺された何らかの手がかりから、一つずつ丁寧に確認していくしかありません。
時間をかけて故人を偲びながらじっくりと調べることができればよいのですが、相続手続きを進める上で期限が設定されているものもあり、効率的に確実に調べていく必要があります。
今回は、相続の手続きでまず最初に行う相続財産(遺産)の調べ方や注意点についてまとめてみました。
目次
1.相続財産(遺産)とは
ある人(被相続人)が亡くなると、その瞬間から相続が始まります。
相続というのは、亡くなった人が持っていた財産を一定の親族が引き継ぐことですが、引き継いだ人のことを「相続人」、引き継がれる人(亡くなった人)を「被相続人」と言います。
民法では、相続人は被相続人の財産に属した一切の権利義務を引き継ぐことが定められています。
この被相続人の財産に属した一切の権利義務を、「相続財産」あるいは「遺産」と言います。
2.相続財産(遺産)に含まれないものもある
相続人は被相続人の財産に属した一切の権利義務を引き継ぐと定められている一方で、相続財産(遺産)に含まれないものもあります。
それがいわゆる一身専属権と言われるもので、あくまでその人個人に密接に関わっていて分けることが難しい関係にあるものです。
その他にも相続財産にならないものがありますが、それは下記記事を参照して頂ければと思います。
[参照記事:知っておいてほしい!相続の対象にならない財産の範囲]
3、相続財産(遺産)の調査方法や注意点
相続財産の主なものについて、どのように調べていけばよいか、注意点なども交えてご紹介したいと思います。
🔳預貯金🔳
①銀行の預金口座を確認
同居している家族であっても、どこの銀行で口座を開設していたのかは案外分かりません。
別居している場合はなおさらです。
まずは亡くなった方の持ち物から、「通帳」や「キャッシュカード」がないかを確認してみましょう。
通帳やカードが見当たらなくても、銀行から様々な通知や取引の報告書が届くことはよくありますので、「郵便物」も必ずチェックしましょう。
通帳等が見つからない場合でも、自宅や職場の近くにある銀行に電話や窓口で直接問い合わせをすれば、口座の有無や残高について開示してくれる場合もありますので、思い当たる銀行等に問い合わせてみるとよいでしょう。
残高だけでなく取引履歴も開示を求めることができます。
取引履歴から他の相続財産が判明することはよくありますので、可能であれば取引履歴も取り寄せておくとよいと思います。
②各口座の預金残高を確認(預金残高証明書を取得)
被相続人の銀行口座を確認できたら、次はそれぞれの預金残高を確認し、「残高証明書」を取得します。
残高証明書の発行手順は以下のとおりです。
✅口座のある銀行に名義人の死亡を連絡(口座の入出金停止=凍結)
↓
✅必要な書類(※) の準備・提出
↓
✅預金残高証明書を発行
※必要な書類とは・・・
被相続人の戸籍謄本(死亡の記載があるもの)
相続人の戸籍謄本(手続をする人が法定相続人とわかるもの)
相続人の身分証明書(顔写真付きの公的機関発行のもの)
相続人の実印と印鑑証明書
ただし、求められる書類は金融機関ごとに異なりますので、各金融機関に問い合わせてご確認ください。
🔳有価証券🔳
株式や投資信託などの金融商品も調査しましょう。
①株式や投資信託などの金融商品を確認
株式や投資信託をはじめとする金融商品は、電子化しているものが多くあり探すのが難しい場合がありますが、証券会社や信託銀行などを窓口にして取引を行うことがほとんどです。
従って、「口座開設時の書類(控え)」や「郵便物」などが手がかりになります。
②金融商品の残高と評価額を確認
金融商品を保有していることが確認できたら、次はそれぞれの証券会社や信託銀行などに「残高証明書」を発行してもらいます。
手順や必要な書類は、「各口座の預金残高を確認」する際と、ほぼ同じです。
注意点としては、残高証明書では端株(はかぶ)といって取引単位に満たない数の株式は記載されません。
後日郵送される「配当金支払通知書」と株数を確認して残高の確認をしてください。
また金融商品を財産目録に記載する際の評価額の算出はハードルが高い作業になりますので、税理士さんなどにご相談される方がよいかもしれません。
相続の際には、この残高をもとに遺産分割協議を行います。
協議で合意した内容は相続税の申告に必要になりますので、遺産分割協議書に合意内容をしっかり残しておきましょう。
🔳不動産🔳
不動産も、自宅に「権利証」や「登記情報通知書」、「固定資産税納税通知書・課税明細書」など不動産に関する資料がないか探します。
また、銀行の預金通帳から固定資産税の引き落とし明細を探すのも一つの手がかりになります。
なお、不動産は一定の評価額を下回る場合には、固定資産税がかかりませんので、固定資産税納税通知書の記載が全てだとは限りません。
固定資産税の課税・非課税を問わず、所有不動産を一覧にした「名寄帳(なよせちょう)」を取り寄せましょう。
ただし、名寄帳は、原則として不動産の所在する市区町村ごとに作成されます。
自宅以外のどのあたりに不動産があるのかある程度わかっていることを前提として、その所在市区町村に請求することになります。
固定資産税非課税であっても、たとえ未登記であっても、亡くなった方の不動産であれば原則として相続財産になりますので、ひとつひとつ丁寧に調べていきましょう。
🔳自動車・バイクなど🔳
これまでの預金通帳や不動産とは違い、確認はしやすいと思いますが、自動車やバイクの所有者(名義人)が被相続人本人であるかどうかをしっかり確認しておきましょう。
「車検証」や「自動車税納税証明書」を見れば確認することができます。
財産目録に記載するために必要な評価額は、買取査定業者に査定してもらった査定額を記載しましょう。
🔳みなし相続財産🔳
みなし相続財産とは、相続もしくは遺贈(遺言書による贈与)によって受け取る財産ではなく、被相続人の死亡をきっかけとして受け取る財産のことです。
被相続人がかねてより持っていた財産ではなく、死亡後に相続人が受け取る「生命保険金」や「死亡退職金」などが税法上のみなし相続財産に当てはまります。
民法上の相続財産ではないため遺産分割の対象にはなりませんが、税法上のみなし相続財産として相続税の計算に含まれることになりますので、しっかりと確認しておきましょう。
被相続人の保険証券の有無、保険会社からの郵便物、銀行口座から引き落としされている保険料がないか、また確定申告書類の生命保険料控除欄などが確認ポイントです。
手続きの際は、受取人とされた相続人が保険会社に連絡して、手続きに必要になる書類を取り寄せます。
🔳借金などのマイナスの財産🔳
借金をする場合、家族には秘密で行っている方も多く、そのような把握が難しい借金の有無を確認する方法としては、やはり被相続人に生前に届いていた「郵便物」や「関係書類」のチェックをするのが有効です。
債権者から支払いの「催告書」、「督促状」などの郵便物、「金銭消費貸借契約書」、「不動産の登記事項証明書」を確認すると抵当権などが設定されている場合は被相続人に借金がある可能性があります。
また、自動車の車検証でもローンで購入している場合は借金の存在がわかる場合があります。
このように、被相続人の身の回りの郵便物や資料を調べるだけでもある程度の借金がわかる場合があります。
しかしその一方で、そういった郵便物や資料がなく、また口座や不動産等もどれくらい所有しているか把握できない場合は、個人信用情報機関に対して開示請求をする方法もあります。
◆全国銀行個人信用センター・・・銀行系
https://www.zenginkyo.or.jp/pcic/
◆シー・アイ・シー(CIC)・・・クレジット系
https://www.cic.co.jp/mydata/index.html
◆日本信用金情報機構(JICC)・・・消費者金融系
若干の手数料は必要となります。
開示請求に必要な詳細等は各HPをご覧ください。
4、財産目録は作っておきましょう
財産目録というのは、被相続人の財産(遺産)がひと目で分かるようにまとめた表のことを言います。
プラスとなる財産の他に、借金などのマイナスとなる財産もすべて記入しておくことで、相続財産の内容を明確にすることができるものです。
必ず作成しなければならないという法律上の義務はありませんが、どのような相続財産があるのか、相続税の納税額はどうなるのかなどを判断する材料となる上、相続手続きを円滑に進めていくためにも作成することをおすすめします。
5、財産目録作成のスケジュール
上述の通り財産目録の作成は法律上の義務ではありませんので、作成の期限はありませんが、相続手続きを進める上で期限が設定されている手続きがあります。
そういう意味で実質的な期限はあると考えてよいと思います。
まず相続開始から3ヶ月で「相続放棄」の申述期限を迎えます。
相続放棄というのは、その名の通りですが相続する権利を放棄することで、例えばプラスの財産より、借金のようなマイナスの財産のほうが多かった場合に利用されます。
この相続放棄をするかどうかの判断も、財産の内容が分かっていないと決められません。
その他にも、相続開始の10ヶ月後には「相続税の申告」が必要になります。
これは、相続財産が基準額よりも多い場合に申告・納付するもので、実際の相続財産の評価額が分かっていないと、その基準を超えているかどうかも判断ができません。
このように財産目録作成の必要性は先に述べた通りですが、作成時期の目安としては遅くとも相続開始から3ヶ月以内に作成されるのがよいと思います。
6、まとめ
相続財産の調査は、確実に、でも可能な限り早期に行いたいものです。
とはいえ、遺品の中から手がかりを発見できてもそこから先、金融機関への連絡や役所での手続きなどが必要であること、そして相続放棄の申述期限や相続税申告期限も迫ってくる関係で、時間はあっという間に過ぎてしまいます。
相続に直面し、どうすればよいか不安になる方も多いと思いますので、そういった方々に今回の記事がお役に立てば幸いです。
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