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戸籍とはどういうものか

遺言書の作成や相続の手続きでは必ず必要となる「戸籍」。

 

一般的に普段の生活ではなかなか触れる機会は少ないと思いますが、私たちのような士業においては業務上関わりが深いものの一つです。

 

人の出生、結婚・離婚、出産、死亡といった人生の節目で必ず関係してくる戸籍、特に相続手続きにおいて収集する戸籍を拝見すると、その方の人生ドラマが見えてくるようで大変興味深く、そして奥深いものがあります。

 

今回は戸籍とはどういうものかをご紹介できればと思います。

 

目次

1, 戸籍とはどういうものか

日本人には必ず「戸籍」というものがあって、戸籍がある場所を「本籍」と言います。

 

本籍と似たようなものに「住所」がありますが、もちろん意味は全て違います。

 

「戸籍」「本籍」「住所」あいまいになりやすいところですが、用語の意味が明確になるとより分かりやすくなるので、それぞれを整理してみます。

 

【戸籍】

  • 出生、死亡、婚姻、離婚、縁組などの身分関係を登録、公証するためのもの
  • 原則として1組の夫婦およびその夫婦と同じ氏の未婚の子が登録単位
  • 戸籍の原本は本籍地の市町村役場に保管されている
  • 証明書類は戸籍謄本、除籍謄本など

 

【本籍】

  • 戸籍のある場所(戸籍の原本が保管されている場所)
  • 日本国内の地番がある場所であればどこで置くことができる

 

【住所】

  • 居住している場所(住民登録がされている場所)
  • 住民1人につき1住所
  • その市町村内に住所を有する住民につき、主に居住関係を登録、公証するためのもの
  • 居住と生計をともにする世帯ごとに作られ、その市町村役場で保管されている
  • 証明書類は住民票

 

そして、戸籍は大きく分けると3種類に分けられます。

 

【改製原戸籍謄本(かいせいはらこせきとうほん)】

  • 改製される前の原(もと)の戸籍
  • 戸籍の様式の変更によって新たに書き換えられる前の古い戸籍

【除籍謄本(じょせきとうほん)】

  • その戸籍に載っている人が全て抜けてしまい(除籍された)、誰もいなくなった戸籍

【戸籍謄本(こせきとうほん)】

  • 現在有効な横書きの戸籍

詳しくはまた改めて触れたいと思います。

 

2, 戸籍には何が書いてあるのか

戸籍に関する事は戸籍法という法律で規定されており、その中で第13条に戸籍の記載事項が規定されています。

 

【第13条/戸籍の記載事項】

戸籍には、本籍の他、戸籍内の各人について、左の事項を記載しなければならない。

  1. 氏名
  2. 出生の年月日
  3. 戸籍に入った原因及び年月日
  4. 実父母の氏名及び実父母との続柄(つづきがら)
  5. 養子であるときは、養親の氏名及び養親との続柄
  6. 夫婦については、夫又は妻である旨
  7. 他の戸籍から入った者については、その戸籍の表示
  8. その他法務省令で定める事項

 

3, 謄本と抄本

各種証明書類を取得する請求用紙を見ると、「謄本(とうほん)」「抄本(しょうほん)」どちらが必要ですか?というような記載がされています。

 

役所に行っていざ申請書を書こうと思ったとき、あれ?どっちだっけ?と思う事はないでしょうか。

 

戸籍で説明をさせて頂くのであれば、

  • 戸籍謄本・・・戸籍に載っている全員の記載事項をコピーしたもの
  • 戸籍抄本・・・特定の個人の記録だけコピーしたもの

いずれもコピーにあたりますが、その大元の書類そのものは原本と言います。

 

原本は役所で保管されていますが、その原本を請求人にお渡しすると役所は手元の記録がなくなってしまうので、私たちが手にするのはあくまでそのコピーである謄本や抄本ということになります。

 

ちなみに現在の戸籍は電子化されていて表現が以下のように変更されています。

  • 戸籍謄本→(戸籍)全部事項証明書
  • 戸籍抄本→(戸籍)一部事項証明書

戸籍謄本は、本籍地以外の場所に届け出る場合の婚姻届、離婚届、転籍届、相続手続きなどで必要になります。

 

一方、戸籍抄本は、パスポート申請の際など本人確認の証明書として使われます。

 

 

4, 戸籍の変遷

戸籍制度は世界中どこの国でも普及している制度かといえば、そんなことはなく、むしろ日本独特の制度になります。

 

世界では個人単位の記録簿が主流ではないかと思います。

 

その日本独特の戸籍制度は想像以上に古い歴史がありますが、国として本格的な戸籍制度が開始されたのは明治5年(1872年)です。

 

その年は申(さる)年で壬申(じんしん)の年といい、その戸籍を壬申戸籍と呼ばれます。

 

その後、方式が数回変更となり現在に至っていますが、その流れをまとめると下記のようになります。

 

◆明治5年式戸籍(明治5年(1872年)2月1日施行、壬申戸籍)

◆明治19年式戸籍(明治19年(1886年)12月1日施行)

◆明治31年式戸籍(明治31年(1898年)7月16日施行)

◆大正4年式戸籍(大正4年(1915年)1月1日施行)

→ここまでが戦前の戸籍で、特徴は以下の通りです。

  • 「家」が単位で「戸主」が筆頭となり構成
  • 戸主を中心として親、妻、子、孫、兄弟姉妹、その家族など複数の家族が戸籍に入っている
  • 戸主が隠居して家督を次に世代に相続すると新たな戸籍が編製される

◆昭和23年式戸籍(昭和23年(1948年)1月1日施行)

◆平成6年式戸籍(平成6年(1994年)12月1日施行)

→昭和23年式以降は戦後の戸籍で、特徴は以下の通りです。

  • 「個人」が単位で「夫婦と未婚の子」で構成
  • 戦前戸籍にあった「戸主欄」「前戸主欄」がなくなり「筆頭者氏名欄」が設けられた
  • 筆頭者が死亡しても、その戸籍に他の人が存在する限りは戸籍は継続される

ザっと整理すると上記の様な流れになります。

 

現在取得することができる最も古い戸籍は明治19年式戸籍になりますが、昔の戸籍はとても読みづらいです。

 

使用されている字体、漢字が今使われているものとは違いますし、手書きなので達筆すぎたりかすれていたりします。

 

相続手続きで取得する戸籍にはこのような古い戸籍もあり読み解くのが大変なケースもありますが、これはこれでやりがいのある作業になります。

 

 

今回は戸籍とはどんなものか、言葉の意味や歴史について、大まかな部分に触れました。

 

次回は、「戸籍はどのように作られるか」というテーマでご紹介したいと思います。

 

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

 


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