親が亡くなって遺産分割協を開き話し合いがまとまった後に、遺品整理をしている中で親が書いたと思われる遺言書が発見されたというケースもあるかもしれません。その場合はどうなるのでしょうか。今回はその対処法についてご紹介したいと思います。
目次
1,遺言書の検認手続きを行った後、遺言書が有効か無効かを確認します
遺産分割協議が成立した後に、もし遺言書を発見してしまった場合は、まずは相続人全員に知らせた上でその遺言書を家庭裁判所に持参して「検認」の手続きを行いましょう。
※この時、遺言書はまだ絶対に開封しないでください。開封せずにそのまま家庭裁判所に持っていきます。
検認とは、遺言書が本当に本人(=被相続人)によって作成された遺言書であるかどうかを調べたり、偽造されることを防止するために行われる手続きのことをいいます。
この手続きはあくまで遺言者本人が書いた本物かどうかを確認する手続きであって、遺言書の内容が有効であるかどうかを判断したり、有効性を保証するための手続きではないという点は注意が必要です。
検認の手続きの約1ヶ月後には、家庭裁判所で「開封」の手続きがあります。
開封手続きは相続人全員の前で行うことが法律で規定されていますが、遠方であったり都合で来れない人もいますので実際は任意での参加とされています。
集まった相続人の前で遺言書が開封されると、遺言書の内容が明らかになるという流れになります。
上記のようにまず検認・開封の手続を終えた後に、遺言書の内容を確認することができます。
この段階でその遺言書が法的に有効か否かを確認する必要があります。
確認といっても、法律に沿って有効・無効の判断をすることになりますので、弁護士や行政書士といった相続手続きの専門家に判定してもらうことがよいと思います。
そこでもし遺言書が無効なものであれば、既になされた遺産分割協議通りのままで手続きを進めていくことになります。
逆に、遺言書が有効と判断された場合は今後の対処が変わってきます。
2,基本的には遺言書の内容が優先されます
遺言は、遺言者の意思を表示したものですので、当然尊重されるべきですし、法的にもそうです。
遺言は、遺言者の死亡の時から効力が発生することになります(民法985条1項)。
つまり、被相続人の死亡したその瞬間に、遺言の内容に基づいて権利関係が変動したことになります。
遺言者の死後どれほど時間が経っていようと、このことは変わりません。
したがって、遺産分割協議が成立した後であっても、遺言が見つかった場合は、基本的には遺言の内容が優先されます。
なお、遺産分割は、協議・調停・審判のいずれかの方法によって行われますが、いずれの方法であっても、遺言の内容が優先することに変わりはありません。
3,相続人全員の意思確認を行います
先ほども触れましたように、遺言書の内容は最大限に尊重されるべきものであり、法定相続分よりも優先されるものとなります。
したがって、基本的には「遺言書の内容に従う」ことになります。
遺産分割協議の後に遺言書が発見された場合はいずれも相続人全員で集まって遺言書の内容を確認した上でどうするのかの意思確認を行いましょう。
遺言書の内容が、既に成立している遺産分割協議の内容と同じ場合、或いは亡き遺言者の意思を尊重した結果、協議内容とは異なるが遺言内容の通りに手続きを進めたいということになれば、再度の分割協議をする必要はありませんので相続人全員が納得の上で遺言内容にそって手続きを行いましょう。
4,再分割の協議が必要となる場合の例
後から発見された遺言書の内容を確認した後で、相続人の誰かが既に行われた遺産分割協議の内容に同意しない場合や以下の場合は、再分割の協議を行う必要があります。
①遺言によって遺言執行者が選任されている場合
遺言書では、その内容を確実に実現させるために「遺言執行者」を指定することができます。
後から発見された遺言書で遺言執行者が指定されていた場合、再分割の協議が必要か否かは、遺言執行者の判断に委ねられることになります。
②遺言による認知がなされている場合
遺言で認知をすることは法定事項として認められていますので、その場合は相続関係が変わってくるため認知により相続人となった者を含め、遺産分割をやり直す必要があります。
③相続人以外の第三者に遺贈させる内容の遺言の場合
遺言書の中に「第三者への遺贈」に関する内容があった場合も、再分割の協議が必要です。
④相続人が遺言によって廃除されていた場合
推定相続人を廃除することも遺言の法定事項として認められています。
この記載がある場合は廃除された相続人を除いての遺産分割が必要となります。
5,まとめ
遺産分割協議の成立後に遺言書が発見された場合の対処方法としてのポイントは以下の通りです。
- 遺言書の検認手続きを行った後、遺言書が有効か無効かを確認する。
- 原則として遺言が協議書よりも優先される。
- 遺言内容を確認し、相続人全員で改めてどうするかを話し合いましょう。
- 遺言内容によっては遺産分割協議をやり直す必要がある場合があります。
遺言書作成側の注意点になりますが、自筆証書遺言を書いて、「よし、これで一安心」と思っても、自身が遺言書を書いたことを周りの誰も知らない場合や、自身しか分からない場所に保管していた場合、もしも亡くなってしまった時に残念ながら発見されずに遺産分割協議が行われてしまう事もあります。そうならないためにも、自筆であれ公正証書であれ遺言書を作成したら身内には伝えておきましょう。
最後までお読みくださりありがとうございました。
行政書士はやし行政法務事務所
代表行政書士 林 宏雄
日本行政書士会連合会(第17271844号)
京都府行政書士会会員(第2655号)
京都府向日市寺戸町寺山12-1(向日市役所から車で2分)
電話:075-555-0513
遺言・相続のお手続きなら当事務所へご相談ください
当事務所は、京都市を中心に関西全域で、生前の相続対策の支援をしている行政書士事務所です。
遺言書の作成や財産管理委任契約、任意後見契約、死後事務委任契約、尊厳死宣言書など様々な角度からご本人様やご家族様が安心できる人生を送って頂けるようなご提案をさせていただきます。
まずはお気軽にご連絡いただければ幸いです。