目次
1,データでみる「おひとりさま」の増加
今の日本は未婚率の増加や核家族化の影響を受けて、単独世帯が増加しています。2018年の総務省データによれば、2040年には単独世帯の割合は全体の約40%に達すると予測されています。特に、65歳以上の単独世帯数の増加が顕著であるということから、今後増々「おひとりさま」は増えていくことがわかります。
左図は単独世帯率の推移と65歳以上の単独世帯数の推移(2020年以降は予測)
総務省HPより
先々の不安を解消するために遺言書の作成や後見制度を活用することが生前対策としては考えられます。実際にそれら制度を上手に利用すれば財産の処分など対処が可能です。しかし「おひとりさま」の場合はどうでしょうか。先ほどの生前対策ですべて対処可能かというと、それだけでは不十分です。なぜなら看取ってくれる家族や、相続人、亡くなった後の手続きを実行してくれる親族がいない場合もあるからです。
当事務所のご相談者の中にも、「遺言を書いておけば大丈夫でしょ」とおっしゃる方がいます。遺言書を作成しておくと確かに財産をどのようにするかという事は決めることができますし、それ以外にも付言事項といって財産以外の「希望」も書くことができます。ただし、付言事項はあくまで「希望」であって財産のように法律上絶対の効力を持つものではないことに注意が必要です。
2,死後の手続きは誰がやってくれる?
人が亡くなったとき、その後にしなければならない手続きというのは意外と多いものです。期限があるものもありますし、手続先も多く手間がかかります。これまで当事者として手続きをご自身でされた方はお分かりだと思いますが、多くの方がおっしゃるのが「大変だった・・・」ということです。
大変だけど、やってくれる家族がいる場合は何とかなるかもしれませんが、身近に頼れる親族などがいない「おひとりさま」である場合、亡くなった後はどうなってしまうのでしょうか。間違いなく言えることは、困る人が出てくるということです。役所が何とかしてくれるものだろうとお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、決してそんなことはありません。誰かに動いてもらう必要があります。
もし何も対策をせずにおひとりさまが亡くなってしまうと、どんなことに困りごとが起きるかのかというと、
- まず遺体の引き取りは誰がしてくれるのか?
- 死亡届は、誰が提出してくれるか?
- 葬儀の手配は誰がしてくれるのか?
- 納骨や埋葬の手続きは?
- 電気・ガスは誰が止めてくれる?
- 公共料金の支払いは?
- 医療費の清算は誰がする?
- 携帯電話の解約は誰がする?
- インターネット、SNSなどのアカウント閉鎖は?
- 自宅の片付け、家財道具など遺品整理や処分は?
- 財産はどうする?
まだまだありそうですが、ザっと具体例を挙げてみると、多岐にわたる困りごとがありますね。これらはすべて役所が勝手にやってくれるものでないことは先に述べた通りです。
このように、起こり得る死後の事務手続きを、今の元気なうちに誰かにお願いして頼んでおく契約を「死後事務委任契約」といいます。
3,死後事務委任契約の内容と効果的な活用法
死後の事務手続きの処理を、生前から頼むことができる「死後事務委任」は、あくまで契約ですので内容を自由に決めることができますし、誰と契約するかも自由に選べますが、できれば弁護士や司法書士、行政書士など法律の専門家に依頼することをおすすめします。
もちろん、友人や知人にお願いして契約することも出来ますが、死後の事務手続きを仕事以外で日常やっている人を聞いたことがありませんし、慣れていない行政手続きをはじめとする諸々の手続きは非常に負担が重いものです。
中には知人として死後事務を頼まれ引き受けたけれど、亡くなった後に実際に手続きをはじめたものの、なかなか予定通りに進められず、結局専門家に依頼することになった事例もあります。
専門家に手続きをしてもらうとなれば、当然費用がかかり、せっかく引き受けくれた知人に負担をかけてしまいます。そうなるのであれば最初から専門家に任せてしまったほうが安心だと思います。
死後事務委任契約において、死後事務をお願いする人を委任者、お願いされる人、つまり委任者の希望に沿った死後事務を引き受けてくれる人を受任者と言います。
死後事務は文字通り、その人が亡くなった後に生じる事務のことですが、受任者は委任者が生前である今、元気に過ごしているか、心身の状態はどうか、何か問題が起きていないかなど、現状を知っている必要があります。なぜなら亡くなったら即座に対応しなければならないのが受任者だからです。
したがって、死後事務委任契約には、「見守り契約」も同時に契約しておくことが一般的です。(見守り契約については別記事「高齢者・おひとりさまの為の「見守り契約」を行政書士が解説」を参照)
「おひとりさま」の場合、自分にもしも異変が生じたときに、受任者に連絡をしてくれる人が近くにいません。ですから、受任者には、定期的に委任者に連絡をとり、異変が生じていないかを確認することが求められます。もっとも、専門家が受任者になる場合は、死後事務委任契約と見守り契約をセットにして結ぶことが多く、それは日頃のケアから亡くなった後に至るまでの一貫したサポートをすることで、委任者が安心して今を過ごしてもらうためです。
そういう意味では、日頃のコミュニケーションとしての「見守り契約」、財産のことは「遺言書」、死後の手続きは「死後事務委任契約」というように組み合わせるなど、専門家を交えて検討するとよいでしょう。
4,費用はどのように支払うか
死後事務委任契約は委任契約です。委任契約は法律上は無報酬が原則なのですが、専門家が関与する場合は特約によって報酬が決められるのが一般的です。ただし金額面は各専門家によります。
もっとも、金額が低ければ確かに費用面は助かりますね。でも、髙ければ絶対安心かというと、そうでもありません。金額が一つの目安にはなるかもしれませんが、やはり重大な事務をお願いすることになりますので、この人なら!と信用できる人に依頼されるのが一番安心できると思います。
上記はあくまで死後事務委任契約を結んだ場合の報酬の話しですが、それとは別に手続き等にかかる費用、つまり実費も当然発生し、それは自己負担になります。死後事務にかかる実費がどのくらいになるかは、死後でないと確定できませんので、契約をするまでの過程で概算を見積もることになります。
支払いは、①遺産清算型、②預託金清算型のいずれかの方法がよく使われます。①はかかる費用を遺産の中から事後に清算するもの、②は死後直後に支払いが生じた際に受任者が立替払いすることなくスムーズな支払いができるようあらかじめまとまった金額を預けておくというものです。
最終的には委任者の希望する方法が望ましいと思いますが、契約時に委任者・受任者双方にとって負担のないよう十分に話し合って決めることが大切です。
5,死後事務をなるべく減らす生前準備を
想定される死後事務についてはご紹介した通りですが、非常に多岐に渡っており相当な事務量になります。
もし死後事務を誰かに託すのであれば、できるだけその死後事務を減らしてあげられるよう生前に配慮しておくのも大切ではないかと思います。
今のうちから少しずつでも実行できるものとしては、例えば、家の中の不用品を処分したり、使っていないようなサービスは解約する、更新していないSNSアカウントは全て削除する、IDやパスワード関係は、全てわかるようにノートにまとめておくなど、できることは沢山あります。
死後事務委任契約を検討すると同時に、今自分でできることも並行して行うこと、それも終活だと思います。
6,「死後事務委任契約」のまとめ
- 自身が亡くなった後の死後事務を元気なうちに誰かに委任しておくことを「死後事務委任契約」と言います。
- 契約内容は委任者、受任者双方で自由に決めることができます。
- 広範な手続き、事務量を考えると専門家に依頼するのが一番です。
- 見守り契約、遺言書など、状況に応じて様々な制度を組み合わせることが重要です。
- 死後事務を少しでも減らすために生前にできることはしておきましょう。
死後事務委任契約なら当事務所へご相談ください
当事務所は、京都市を中心に関西全域で、生前の相続対策の支援をしている行政書士事務所です。遺言書の作成や財産管理委任契約、任意後見契約、死後事務委任契約、尊厳死宣言書など様々な角度からご本人様やご家族様が安心できる人生を送って頂けるようなご提案をさせていただきます。まずはご希望やお困りごとなど、お話しをじっくりと伺いたいと思います。お気軽にご相談ください。
案件によっては税理士や司法書士などの他士業とも連携しながらご相談者様の希望を形にいたします。
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行政書士はやし行政法務事務所
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